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複音ハーモニカの将来 柳川優子



複音ハーモニカの将来 柳川優子


1.複音ハーモニカの昔と今
 ハーモニカが初めて作られたのは今から約100年前の1821年、ドイツのベルリンでした。
また日本に入ってきたのはその70年後、1891年と言われています。
大正初期から昭和にかけて、ハーモニカはマンドリンと人気を二分するほどのポピュラーな楽器で、
川口章吾氏、宮田東峰氏、佐藤秀廊氏などのプロ演奏家が生まれました。
川口章吾氏はホーナー社の複音ハーモニカをモデルにして日本式配列の複音ハーモニカを考案しました。
この『純日本産複音ハーモニカ』が、アジア各国で今でも吹き継がれている現在の複音ハーモニカです。

2.複音ハーモニカの魅力について
 私が考えるハーモニカの魅力は主に3点です。
(1)トレモロの美しく、心地よい音色
複音ハーモニカの音色を聴くと、日本人ならだれもがどこか懐かしい気分を覚え、その優しい音色に心癒されることと思います。
これこそが、他の楽器にない、複音ハーモニカの魅力の最たるものでしょう。
(2)色々なジャンルの曲の演奏が可能。
童謡唱歌も民謡も、演歌もJ-POPSも、クラシックもジャズも、タンゴもボサノバも。
どんなジャンルの曲も複音ハーモニカで演奏するとピッタリ合ってしまうのです。
(3)独奏でも合奏でも楽しめる幅広さ。
一人で伴奏をつけながら独奏もできれば、ハーモニカだけのアンサンブルも、他の楽器とのコラボレーションもできる、その演奏形態の幅広さ!
ヴァイオリンもピアノもいいですけど、やはり複音ハーモニカの魅力は誰もが気軽に、色々な音楽を楽しめる!ということに尽きると思います。

3.複音ハーモニカの将来を考える
 ハーモニカが小学校などの初等教育で楽器指導の手段として使われなくなってから、ハーモニカを手に取ったり、
その音色を一度も聴いたことがないという世代が増えてきています。
そんな中、私は
(1)一般の方に複音ハーモニカを知ってもらうための啓蒙活動(演奏)
(2)若い世代への技術継承(指導)
(3)複音ハーモニカという楽器の魅力とその秘めたる可能性を限りなく追求(研究と技術向上)
この3つを活動の柱として、複音ハーモニカに取り組んでいます。
 特に演奏を通じた啓蒙活動に於いては一般の方の耳に届くよう、野外イベント、オフィスでのロビーコンサートや企業・組織のパーティー、
福祉施設や公共施設での演奏など、普段ハーモニカを聴くことがない方が集う場でなるべく多くの演奏機会を持つよう、心がけています。

4.台湾の現状を見て
  昨年12月、台湾の『音和楽器』様より招聘され、台北にて演奏会を開催させていただきました。その前日に交流事業として『國立重陽小学校』を訪問し、
ハーモニカオーケストラの合奏を聴かせていただきました。6歳~13歳くらいの子供たちが心を一つにして、ドボルザーク『新世界』の4楽章を合奏する様子には
鳥肌がたつような感動を覚えました。
指導者の楊先生の情熱と、真剣に一つの曲に取り組んでいる子供たちの姿勢には私自身がたくさんの『気付き』をいただくと共に、
今の日本の複音ハーモニカ界に足りないものを教えていただいたような気がします。
帰国後には『自分も日本の複音ハーモニカ振興のためにがんばらないと!』と思わせてくれる、大いに刺激を受けた貴重な体験でした。

5.私が考える複音ハーモニカの将来
  現在、私が指導をさせていただいているサークルや個人レッスンの生徒さんも高齢化が進み、体力の衰えなどを理由に退会する方も増え、
最近では休止・解散するサークルも出てきてしまいました。日本の伝統的な奏法である分散和音奏法やベース奏法などに取り組む方も減ってきているように感じます。
そんな現状を見て、このままでは日本の複音ハーモニカ文化は消滅してしあうのではないか、という強い危機感を抱いています。

そんな複音ハーモニカの明るい未来を築くにはやはり、若年層への普及を積極的に行うことが何よりも重要なカギだと思っています。
同時にプレイヤーとして、ハーモニカを聴いたことがない一般の人々の前で演奏する機会をたくさん持ちたい、と思っています。
そのためには、パソコンやインターネットといった現代の時代に沿うようなツールを使って、複音ハーモニカの魅力について、情報発信することも必要だと思います。
また、古来からの奏法であるベース奏法や分散和音奏法でのソロ演奏など、技術の継承をするとともに、ピアノとの共演や他の楽器とのコラボレーションなど、
既存のワクに捉われない複音ハーモニカの可能性を追求していきたいと思っています。
それこそが私自身を育ててくれた複音ハーモニカという楽器への恩返しであり、ライフワークだと考えています。